2011年7月25日月曜日

大学は減らした方がよい。

長年、日本文学の研究をしてきた、ドナルド・キーン、コロンビア大学教授が日本国籍をとって、日本に定住するというニュースがありました。東北震災の少し後です。

彼は若いころイギリスのオックスフォード大学に留学しているのですが、そこで同僚学者からこんなことを言われます。『アメリカの大学には皿洗いの博士号があるんだって?』 これは勿論アメリカの大学の水準を揶揄したイギリス人特有の皮肉です。アメリカや日本には驚くほどの数の大学があるのに対し、ヨーロッパの大学は本当に少数で学生の質もレベルも圧倒的に違います。

日本も高度成長期とベビーブームで大変な数の大学ができました。そうした教育水準の高さが日本の発展を支えたのですが、だいぶ事情が変わってきました。子供の数は大幅に減少し、その多くが大学に進学する中で、大学教育に値する内容を身につけることのできない学生が増えてきました。彼らの多くは実は勉強が嫌いで、大学で勉強をしようという気持ちはほとんどありません。目的も無く。勉強する気も無く。自分が進学する学部に関する知識も無い。『うちなんてそんな学生ばかりだよ』と言った大学関係者は一人や二人ではありません。

私の仕事は大学に入りたい高校生に数学を教えることですが、かつて、ある生徒に『そんなに勉強が嫌いなんだから、大学じゃなくて専門学校へ行って、きちんとした技術を身につけたら』という機会がありました。きちんとした実務を若いうちに身につける、そのほうがやる気なく大学に進むよりはるかに良いはずです。彼は『大学に友達を探しに行くんです。それ以外は何の関心も無いけど』と答えました。

『友達を・・・探しに・・・』 彼に数学を教えることがとても空しくなる瞬間でした。彼は今、友達を探しに大学に行っているはずです。

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