2012年2月29日水曜日

偏差値という幻想

「・・・高校は偏差値が55ですよね」という話は受験生本人より父兄の話の中で出てくることが多いように感じます。どこの偏差値か尋ねると、たいていウェブ上に出ているものです。

私はウェブ上の偏差値をほとんど信用していません。怪しいものがあふれています。2012年版偏差値といいながら、数年前に廃校になった高校が載っているものすらあります。ちゃんとした一定量のデータを持っているとも思えないし、計算しているかさえ疑わしいものです。おそらく、どこかの模試や塾の偏差値表を借用し、それに手を加えたものなのでしょう。

日本の数学教育で「統計」はいつも日陰の存在です。かつての数学Ⅲには、微分積分とともに統計の章がありましたが、大学入試では数Ⅲ(統計を除く)というのが一般的でした。そのせいか偏差値に関してはよく分かっている人があまりいないようです。

とりあえず、偏差値をおさえる最低のポイントは母集団の異なる偏差値を比べることには意味がないということでしょう。国立大学の理系と文系を比べる。こうした比較は有意性を持ちません。数学で同じ60点を取ったふたりの文系、理系受験者の偏差値は通常、理系のほうが低くでます。理系受験者の数学平均点が文系受験者の数学平均点より高いからです。

偏差値はある予備校が作ったのだと言う話を聞いたことがあります。そのせいか、高校数学で分散や標準偏差はかつて扱っていましたが、偏差値そのものを扱ったことはないはずです。私たちが気にしている偏差値とはそのようなものなのです。

2012年2月28日火曜日

君原健二をしっていますか?

君原健二を知っていますか?

マラソンランナーです。東京オリンピックの代表で、次のメキシコオリンピックで銀メダルを取っています。更にその後のミュンヘンオリンピックでも入賞しています。

首を斜めにかしげ、いつも苦しそうに走っている姿が印象的でした。

70歳を過ぎた現在もまだ走っているようです。今まで走った数多くのマラソンで途中棄権が一度も無いはずです。あれだけ苦しそうに走っている人が一度も棄権していない。それは驚くべきことでした。

東京マラソンがあり、日本人最高位となった無職のランナーと、期待されながら結果を出せず翌日頭を剃って反省の意を示した公務員ランナー。個性的な二人の話題がニュースになっていました。

42.195kmの孤独なレース。その中でこうした個性が磨かれたのでしょうか。最終的には自分自身に頼るしかない。そうした自立した人々の強さを見た気がします。

高校数学改変

指導要領の改訂で高校数学の内容が変化します。ゆとりからの揺り戻しで、全体的に内容が増える(以前に近づく)のですが、相変わらず整合性の無い改変です。

数Ⅲの行列が無くなり、そのかわりに複素数平面が復活します。恐らく、次回の改定では行列が復活し、複素数平面が抹消されるのでしょう。この繰り返しです。

数Ⅱの積分で3次以上の関数が扱われるようになる。2次関数を微分してどうするんだ。3次関数以上の積分が無いなんて何のための積分なの。といった、正当な意見に耳を貸したわけでもないのでしょうが、やっとまともになります。

その分、数Ⅰで3次式以上の展開、因数分解が消える。なんてこった!

三角関数を180度までで数Ⅰと数Ⅱに分断するなど、あまりに本質的(数学的)でないことによって、数学教育はずたずたです。

2012年2月24日金曜日

後期選抜合格者発表

東大合格者千何百人というのが謳い文句の通信教育(添削)の会社があります。知りたいのは東大不合格者がどれだけいるかということです。おそらく合格者数以上いるのでしょう。

公立上位校合格者数を競う大手学習塾がいくつかあります。知りたいのは不合格者がどれだけいるかということです。

高校受験は多くの公立中学生にとって、初めてのシビアな試験です。本人も周辺もそのことで頭がいっぱいになってしまいます。それは全く正当なことです。ここ数ヶ月の努力は合格を勝ち取るためのものでした。その中で、初めて自分自身を追い詰めるという体験をした人もいるでしょう。そうした人は間違いなく何かを得たはずです。

しかし、結果は、そうした努力、希望、意志などとは無関係に冷徹にくだされます。そして、その結果をどのように受け入れるか。それが問題です。

とりあえず言えることは、受験は重要なものだが、全てではないということです。今回の体験の中で、自分自身や受験ををどのように相対化また客観化できるか。その契機になればよいと思います。

ともあれ、数時間後に後期選抜合格者発表です。

2012年2月22日水曜日

killing time?

後期選抜が終わったあと、学校で中3が何をやっているかというと、卒業式の練習やら、合唱コンクールやら、卒業旅行と呼ばれる怪しげな旅行やら、全く、勉強していないのに驚きます。

特に神奈川県は他県と比べ、高校受験が早くおこなわれます。その結果、後期選抜では高校入学まで2ヶ月弱、前期選抜に至っては3ヶ月弱まともに勉強しない者がいることになります。2ヶ月でできる勉強がどれほどのものか知っているものとして大変気になります。

同じことは高校でもあります。3日続けての球技大会等、開いた口がふさがりません。学校は時間つぶしではないはずです。

それでいて、学習量の増えた新指導要領をこなすには十分な時間がないと言っているわけで、どうなってるんでしょう。

2012年2月15日水曜日

あまりに保守的な

数学が好きだという人にその理由を尋ねると、答えが一つしかないからとか、答えが明確だからという返事が返ってくることがあります。それが数学好きの理由だというのはどうかなとおもいますが・・・

たしかに、一般的に数学の答えは一様に決まるものが殆どです。しかし、それに至るプロセスや方法は決して一様ではありません。

三角関数とか、ベクトルとか、数列とかいった分野では、問題のレベルによって多様なアプローチが可能です。いや、sin(2π/3)の値がいくつかというような極々簡単なことでさえ、多様な方法が存在しています。

長く、数学をやっているといろいろなものに出くわします。上記の三角比の値を求める方法等は細かい差異を問題にすれば今までに片手では足りないだけの方法を見てきました。その中で最善と思えるものを使ってきました。いくら慣れ親しんだ解法があったとしても、より優れた方法を学ぶ。それを自分に言い聞かせています。

ところが中高生が案外そうできない。一度身につけたものを後生大事に守り続けている。若いんだから、そんな解法は屑籠に捨てて、もっと良い方法を身に付けようよといってもなかなか乗ってきません。そして、とんでもなく悪い方法で解き続けます。混乱するからとか、今のやり方で十分解けるからとか言い訳をします。

君たち中高生には長い未来と可能性があるのです。そんなに保守的でどうするのですか?

2012年2月12日日曜日

あと3日

午前中に中3の入試対策をしました。

この2ヶ月、中3とはほぼ毎日顔を合わせています。その間にやった過去問、模擬試験は数知れず。その成果が間違いなく出ています。今日やった3教科も全員が40点超でした。2ヶ月前にはこの点を想像することができなかった人もいます。

「勉強ってやればできるようになるんだなあ」という当たり前で、単純なことを再確認します。この業界にいる人の中には「生まれ持った能力が大きい」と考える人が案外沢山います。そのことを一概に否定はできませんが、公立高校入試問題を学ぶ程度のことに関しては、努力でかなりの部分が補えます。逆に、「少しばかりできる」つもりで勉強を馬鹿にしている者の方がずっと問題は大きいのです。

あと3日、最後まで手を抜かず、ゴールに駆け込みます。後期選抜が終わった日、塾で慰労会をします。

2012年2月10日金曜日

後、一週間

高校受験の志願変更が終わり、サイは投げられました。泣いても笑っても後一週間です。

受験校は生徒本人の希望、親の希望、内申点、学力、その他の条件、経済的な事由。そうした様々な判断の中で、最善なものを選択します。

その際、内申、学力が希望校と大きな乖離があると悩ましいことになります。中学校が薦める受験校は安全第一ですから、時として、学力よりずっと下位の学校だったりします。本人がそれを是としない場合、それなりのチャレンジをすることになります。

そのチャレンジが明らかに無理なときはそのように本人・父兄に伝えますが、それでも本人・父兄の希望が強い場合、残された僅かな可能性に賭けることになります。

神奈川県の公立高校は受験が終わってから合格発表までの期間が大変長く、その間、父兄もそして私も胃の痛い日々が続きます。

2012年2月8日水曜日

後期選抜倍率

後期選抜の倍率が出ました。それを受けて今日・明日が志願変更期間です。

今年から大原高校の募集がなくなったので、例年なら大原を受験する層の動向が気になっていました。偏差値的に大原に近い高校は受験者数がいくらか増加しています。意外なことに茅ヶ崎北陵が定員割れをしていました。

何れにしてもあと十日の勝負です。周辺の中学ではインフルエンザが流行っています。体調に留意しましょう。

2012年2月5日日曜日

地図

地図を見るのが大好きです。世界地図、日本地図、山岳地図。見始めると時間を忘れます。山岳地図など何時間も見入ってしまうことがあります。

友人にこのことを話すと、「その通り」と同意して、「以前、地図を見ていたとき、傍を通りかかった女房に『どれだけそれを見てれば気が済むの?』と言われたんだ。この楽しさが分からないんだよねえ」と嘆いていました。

また、別の友人がカーナビが出始めた頃、「あんなの着けて何が嬉しいんだろう?地図を見る喜びがなくなっちゃうじゃん。絶対売れないよ」と言っていました。僕もそれに深く納得したものです。

今日中3と一緒に地理をしました。地理のような教科は表面上の知識の量より、その背後にどれだけ大きな背景を持っているかが高得点の決め手だと改めて思い知らされました。教科書で学ぶこと、学校で学ぶことなど高が知れれいます。その何倍もの、或いは何十倍もの背景があって、それが受験レベルの問題になってくるとものを言ってきます。これはテストに出る、これはテストに出ないといったけちな勉強をしているとそれに気づきません。テレビや新聞や地図や旅行や、その他、様々な情報から入ってきた膨大で広範な知識。それがないとあるレベルから上にはならないようです。

2012年2月3日金曜日

コネ採用

東京新聞にこんな記事がありました。

出版社の「岩波書店」が縁故のある人のみを採用するというものです。いわゆる「コネ採用」です。岩波文庫・岩波新書その他優れた学術書を出版している会社です。文化人でもある初代社主岩波茂雄以来の出版姿勢に好意を持っていただけにがっかりしてしまいました。一私企業の考え方に口を挟む気はありませんが・・・

アジアは色々な意味でコネの社会です。コネとかねでまわっている部分がたくさんあります。中国でもインドでも、そして、日本も決して例外ではありません。インドでは、好意だと思った直後に「バクシーシ(お礼のお金)」を請求されるのは普通です。

以前の日本の学生はありとあらゆるコネを利用して就活をしていました。有名な大手広告代理店は「コネ通」と呼ばれていたはずです。就活をしている大学生に話を聞くと今はそうではないと言います。少なくとも優良企業はそうではないと。日本も少しはマシになっているんだと思ったのですが、半信半疑でした。

今回の岩波書店の決定はその疑いを更に強いものにしました。画家ミレーの「種を蒔く人」を出版社のマークにした本屋の、らしからぬ決定に故・岩波茂雄氏の意見を聞いてみたい気になりました。