学生時代、俳人・山口誓子(やまぐちせいし)の弟子である工学部教授が主催していた作句ゼミをとったことがあります。俳句を作って単位が取れる、しかも、『優』が乱発されるという噂でした。これはとるしかないということで、畑違いですが、その講座をとりました。
毎回、五首の句を作り。輪読し、気に入ったものに票を入れるというパターンでした。その中に、今でも蘇るものが数首あります。
今日のように、雲ひとつない、30度を越す日中の、眩暈(めまい)を起こすような日差しのときに、決まって思い出す、
・・・・ 母 逝くと
友 言い放つ
炎昼や ・・・・
東京の大学に出てきた作者が夏休みに帰省した折、炎天下、高校の友人から『母親が死んだ』と告げられた時の句です。
もう一首。これは一緒にゼミをとった友人の作です。
・・・・ 母よりの
メロンの包み
腐りおり ・・・・
九州の田舎の母が送ってきた小包を開けると、中から腐ったメロンが出てきた。今のように宅急便の無い時代で、九州から東京はかなりの時間がかかっていました。おそらくそのメロンは母親が誰かからもらい、仏壇に供えていたもので、当時高価なメロンを是非とも東京の息子に食べさせたいと思い送られたものなのでしょう。
最後に私の駄作
・・・・ 三寸も
雪 積もれりと
母 起こし ・・・・
偶然ですが、三首とも『母』という語があり、田舎から東京に出てきた大学生のある種の共通な心情を感じます。
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