2010年1月8日金曜日

愛読する詩集を持つこと

90歳になる父から私の中学生の子供へ手紙が送られてきました。それは私宛てのものとは全く異なったもので知らなかった父の側面を垣間見せてくれました。

父は軍人でしたので、私に書く手紙は時として候文でしたためてありました。『~しおり候』というやつで、父からの手紙以外に本物の候文を読む経験はありませんでした。

そんな父が今年受験生となる息子に平明に語りかけるように書いた手紙はおおよそ次のような内容でした。勿論、候文ではありません。
 
おじいちゃんは中学3年(旧制中学)の正月幾つかの目標を立てました。
柔道で日本一になること。
陸軍士官学校に合格すること
微分学積分学を完全にマスターすること
島崎藤村の詩集を暗記すること
この4つです。
・・・・・・・・・・・・

この内、柔道日本一は残念ながら後僅かで果たされませんでした。陸軍士官学校には入学しました。微分積分はどうだったのでしょうか。父に聞いたことはありません。
一番意外だったのは『千曲川旅情』の藤村詩集を暗記したということです。若かった父のイメージが大分変わってきました。

実は私も詩集をそこそこ読んでいます。長いヨーロッパ放浪の旅で何冊かの詩集をぼろぼろになるまで読みました。中原中也、石川啄木、ブレイク、リルケ、ランボー、ボードレーヌなどです。そして、そうした詩の一節が折に触れて蘇って来ます。

 ”ここちよく われにはたらくしごとあれ そを成し遂げて 死なんとぞ思う” (啄木)

こうした詩が人生の様々な局面で私を支えてきたように思います。

1 件のコメント:

  1. 候文の実物は読んだことないですねぇ。

    自分を支えてくれるほどの詩集を持っていないですが、詩や俳句は好きで季節の変わり目なんかに口ずさんでいます。
    この前、松尾芭蕉と与謝蕪村の句集を買いました。

    高校の頃は古文が大の苦手だったのですが、今になって古文(と言っても一部分ですが)が好きになるというのも面白いなぁと思います。

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