2011年1月12日水曜日

深夜の雪

寒い日が続きます。一昨日は夜半から雪がちらつき、それをしばらく見入っていました。

        『太郎を眠らせ 太郎の家に雪降りつむ
        『次郎を眠らせ 次郎の家に雪降りつむ』 
                         (三好達治)

おそらく小学校のときに、この詩を読んだのではないかと思います。そのとき、この詩が好きというわけではありませんでした。とても普通の詩だと思ったことだけをおぼえています。

私は石川県の金沢にある小学校に通っていました。冬になると、日本海側の空一面に雪を孕んだ重い雲が垂れ込めていました。冷たい冬の空気と、薄暗く低い空。いくらか陰鬱な感覚。それが今思い出す。北陸の冬です。作家泉鏡花や詩人室生犀星の作品に通奏低音として流れるものは金沢の冬なのでしょう。

深夜に雪を見ると、当時の感覚が一瞬に蘇ってきます。そして、頭の中に、『太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪降りつむ、次郎を・・・』が流れてきます。ああ、良い詩だなあと思います。この詩が好きになるために沢山の時間が必要だったんだなと感じます。長い時間の中で熟成したものがあるのでしょう。

学校教育(特に小学校)ではできるだけ古典的なものを沢山身につけられると良いと思います。そのとき、わかるようなものである必要はありません。いつかそれが時熟し、開花するかもしれません。分かることばかりを気にするより、たとえ分からなくても、質の高い良いものを沢山与える。そうしたやり方あるような気がします。

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