2010年3月22日月曜日

春 その2

野地先生の『春』を読んで様々な感慨が蘇ってきました。

かつて日本の春の風物詩の一つは『集団就職』でした。東北や九州の中学校を出たばかりの子供たちが集団で東京、大阪、名古屋の工場などに就職したのです。

TVで『今年も集団就職の第一陣が上野駅に到着しました』というニュースが必ず取り上げられていました。中学の制服を着たホウズ頭の男の子、おかっぱ頭の女の子が両手にボストンバッグを持ち、上野駅に下りる様子が映像で流れていました。

そうして、東京の町工場や、大阪の商店、名古屋の繊維会社等に就職した子供たちが今日の日本の繁栄の一翼を担ったのでした。

それから随分経って、同年代の子供を持つ親となって初めて分かったことがあります。当時、東京に行くことは今とは比べ物にならないほど大変なことだったようです。まだ15歳の子供を、見ず知らずの遠い東京の工場に働きに出す。その親の心中を思うに、その悲しみがどれ程のものであっただろうかということです。

高校の漢文の授業をそんなに熱心に学んでいたわけではありませんが、幾つか覚えている文があります。

 燕々 汝 悲しむこと無かれ 
 高飛して 父母に 背きし日
 当時 父母の思い 
 汝 今 まさに 知るべし

というものです。昔のことで間違えている部分もあるように思います。ご容赦ください。
突然蘇ったこの漢文の意味が少し分かる年齢になりました。

今の中3はまだまだ子供です。一人で生きていけるとはとても思えません。それでも、とんでもない可能性を持った子供であることも事実です。

そうした別れの後に、また素晴らしい出会いがあったのだろうと思いたい気持ちでいっぱいです。

きょう高校野球春の大会開幕です。

1 件のコメント:

  1. 中学を卒業してすぐに親元を離れて東京にやってくることって、
    すごく勇気がいる事ですよね。

    今の世の中を作ってくれたそんな人々に感謝です。

    もっと良い世の中にしてゆけるよう頑張ります。

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